次元という概念が消失した空間。そこは、夢の世界だった。
1月16日、豊洲PITにて行われた、許斐 剛☆サプライズLIVE~一人テニプリフェスタ~に昼夜参加してきました。あの夢のような空間の素晴らしさを書かずにはいられないので感想を。長くなるのでいくつかに分けます。今回はライブのコンセプトそのものについて。
許斐先生自身のTwitterから、「どういう形でか原作絵のキャラがライブにゲスト参加するらしい」ということは事前に分かってました。
漠然と、予想はしていたわけですよそりゃ。正面、横、背面と描かれたキャラの立ち絵をみたら。
予測はたしかにあたっていて、けど予測していたはずなのに実際に見た衝撃は、言葉に言い表せないほどだった。
「沢山のキャラが遊びに来てくれています、トップバッターはー」
そんな呼び込みで、ステージ上部の扉が開き、そこには。
遠山金太郎が、いた。
その瞬間、皆が悲鳴を上げた。歓喜の、狂喜の、そして驚愕の。
目の前にいるのは天真爛漫で、破天荒で、可愛くて、かっこよくて、私たちのよく知る金ちゃんだ。動きだって金ちゃんそのもの、聞こえてくる声はアニメでずっと聴き馴染んでいた、たしかに彼の声で。歌って踊る姿に合わせるように影も動いて。先生と言葉を交わし、歌を掛け合い、ハイタッチまでしている。
動く原作絵というだけで、意味がわからないというのに。
これは夢か現か。私達の目の前で起きている、これはいったいなんだ。
原作から飛び出てきた「ような」ではない。本当に飛び出てきたのだ。
突然映像が投影されて、っていう話じゃない。
扉が開き、彼らがステージに登場し、扉が閉まる。
また扉があいて、扉の向こう帰っていって扉が閉まる。
本当にそこに来てくれたように思えた。否、来てくれていた。
許斐先生から、今回使っているのは「モーションキャプチャ」という手法なのだと教えられた。リアルタイムで踊っているダンサーさんの動きが、そのまま投影されているのだと。てっきり、事前に録画された映像だと思っていたからすごく驚いて。
だから、と続けられた言葉に、その場にいたものは皆、心の底からの、歓喜を知った。
「彼らは いるんです」
アクターさんがいるのだから、「キャラそのものではなく、やはり映像である」でもない。「命を吹き込んでいる人がいるんだよ」という話でもない。
「彼らはいる」と、この場に、この空間に、たしかに存在しているのだと、先生がおっしゃってくださったのだ。それが、どれほど嬉しくて、幸せだったか。
紙面や画面にしかいなかったはずの彼らが、原作のままの彼らが、ここにいるという、あり得なかった奇跡がここにあった。
そのあとも不二、幸村と王子様達がやってきて。
白石。彼が「Brave heart」を先生とデュエットした。
この曲は、テニプリCDの300タイトルを記念して出されたもので、越前リョーマのことを、学校の先輩、他校のライバルたちが歌い上げる曲だ。主人公はやっぱりリョーマだと、強く感じさせてくれる曲。
その曲が終わり、次の曲のイントロがかかる。聴いた瞬間にわかった、「フェスティバルは突然に」だ。
この曲は、アニメ10周年記念のテニプリフェスタの際に作られた曲。作者であり、キャラの生みの親である許斐先生と、主人公である越前リョーマがまるで会話をしているような、そんな曲だ。この2曲の流れというだけで、もうテンションは最高潮に。
事前にリョーマの声優である皆川純子さんのゲスト出演が決まっていたこともあり、
おそらくモーションキャプチャでの越前リョーマ、あるいは純ちゃんが出てくるだろと。誰もが思っていた。先生のパートがそろそろ終わる。次はリョーマパートだ。
扉があき、トリコロールカラーのジャージが見える。
出てきた瞬間、私は崩れ落ちそうになった。涙が止まらなくなった。
そこにいたのは、「越前リョーマ」だった。けれどそれは、原作絵の彼ではない。
テニミュ2ndシーズンで、最初から最後まで越前リョーマを演じきった「小越勇輝」その人だった。
本来、テニミュを卒業した筈の彼がこうしてまたリョーマの格好をすることなど、ありえないことだ。事前にゲスト告知があったとはいえ、つい先日まで金髪だったのが分かっていたから、多分「本人として」出てくるものだと、思っていた。
それが、彼が完全なリョーマとして現れた。しかも、歌う曲があれだ。先生とリョーマの、会話のような、それを小越リョーマが。
キャラソンをミュキャスに歌ってほしいなぁ、なんて妄想は何度もしたことがあった。
でも、それが叶う日が来て、その場にいられるなんて、思ってもみなかった。
それも、それまで3次元に原作キャラ達が来ていたのと同じ流れで、かつ、Brave heartのあとに、この曲で。
そこにいたのは「テニミュ2ndのリョーマ」であるのは間違いなくて。仕草も、表情も、声も、テニスフォームも、一年半前までずっと見ていた姿だった。もう二度と、見ることなどできないと思っていた、大好きだったあの姿。
それと同時に「原作から飛び出てきたリョーマ」にも見えた。だってこの曲は、アニメのリョーマが先生と歌う曲で、そしてそれまで出てきた3人のキャラ達は、先生が描き下ろしになったもの、つまり原作絵で。立体になっていて。
そこにいたのは、「テニミュで越前リョーマを演じた小越勇輝」ではなかった。
「完全なる越前リョーマ」だった。
かなわないと思っていた夢が、最高以上の形で叶った。
その後に披露された新曲「悲しいね・・・キミが近すぎて」は、キャラクターたちが読者にほのかな恋心を抱くといったもので。先生はどこまでも、二次元であるキャラと、三次元に生きる読者との間にある壁を、なくしてくれているようだった。
先生がお着替えなさる間、「TENNIVERSARY」という、キャラ達が自分たちの部活時代を振り返る曲のインストにのせて無印原作1巻~新テニ最新刊までの振り返り映像が流れた。
そして原作最終回に歌詞が掲載された「Dear Prince~テニスの王子様達へ~」からライブは再開。この曲はブン太が。
続くキャラクターは手塚だ。彼は今ドイツにいる。そこからわざわざ駆けつけたという彼が身にまとうのは、青学ジャージではなく、ドイツ代表のジャージ。その徹底ぶりに、さらに感動させられた。
これまでは、先生との会話をして、ステージを後にしていったキャラクターたち。ところが、手塚がさる時、現れたのは跡部。2人の会話から、跡部の出番へと。
もう、本当に。あの2人の会話が目の前で繰り広げられることの凄さ。
そして、跡部の出番が終わり、まったく聞き覚えのないイントロが。先生が事前に4曲新曲をお作りになったと言っていた。その時点で、新曲はまだ2つしか披露されていなかった。つまりこれは新曲だ。そして、その曲の途中、また扉が開いた。
「皆川リョマ子いっきまーす!」
純ちゃんだった。キャラクターたちの出番の後、満を持して主人公声優の登場である。
その新曲では、その場に来ていないはずの青学レギュラー全員の声が入っていた。
ほかのレギュラーに関しては声優さんの姿はなくて声だけだから。なおのこと「キャラの声」としか思えないわけで。すると、ステージに立っているのは純ちゃんだと分かってなお、やっぱり「リョーマがいる」としか思えなくなる。
そしてアンコールの、ほんとうに一番最後の曲。「Love Festival」この曲は、2011年に発売されている、オールスターによるキャラソンです。2014年にはネルケ主催の大イベントネルフェスにて、テニミュキャスト、純ちゃん、許斐先生で披露されました。この時、ラスサビ前のパートを先生と純ちゃんとおごたんで繋いだという話を聞いて、死ぬほど羨ましかったことを覚えています。その再現が見られたのです。
そして、後ろでは、それまで来てくれてたキャラ達も、また登場してくれました。
テニスの王子様の生みの親である許斐先生は、勿論生身の、3次元に生きる人間。
キャラクターたちは、2次元の存在だ。けれど、たしかにその時そこに「いた」。
声優さんである純ちゃんは、2次元の存在であるキャラに命を吹き込んでくれる、やっぱり3次元の人間で。ある意味2次元よりの2.5次元。
俳優であるおごたんは、3次元に2次元のキャラクターを連れてきてくれた、3次元よりの2.5次元。
次元が違うはずの各々が、たしかに一つの舞台の上に、同時に存在していた。
これを奇跡と言わずに、なんと呼べばいいのだろう。
このような奇跡を実現させるには、どれほどのことが必要かなんて、こちらが考えたって到底たどり着けないほど、大変なことだった筈だ。
それなのに先生は、みんなに喜んで欲しかったからと笑うのだ。そこには、混じりけのない、純粋な愛しかなかった。
幸せが詰まった、最高の空間で、最高のライブでした。