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テニスと芝居とアイドルと

越前リョーマは実在した。

頭悪そうなタイトルだけど仕方ない、だって実際そうだったのだ。

というわけで許斐先生のライブの感想第二弾。今回は小越リョーマについて。

次元という概念が消失した空間。そこは、夢の世界だった。 - A✕A✕A

ちなみに第一弾はこちらです。

内容一部被るというか、1つの書ききれなかったからこそ単独記事にして書こうと思ったわけですが。

 

小越勇輝という俳優は、2011年~2014年の約4年間に渡る長期間、それも無印原作全42巻分を最初から最後まで座長として、主人公・越前リョーマとして、駆け抜けてくれた人物で、テニミュ出演公演数が歴代キャスト最多の通称「プリンス・オブ・テニミュ」だ。彼が駆け抜けたのは「テニミュ2ndシーズン」。

そしてテニミュは現在3rdシーズンを迎えており、つまり彼はOBになるわけだ。

既に卒業してる上にテニミュ現役のリョーマ役がいるのだから、彼がまた「越前リョーマ」になる機会なんてあり得るはずがなかった。というか、許されるとは思わなかった。

その上、彼は本当に直前まで金髪だったのである。リハーサルに参加しました、といっていたのはライブの2日前。その時はまだ金髪で、髪の毛もふわっふわでリョーマとはまったく違う髪型。それを、髪を染めて、髮型だって整えてくるまで完全に作り上げてくるとは思ってなかった。

当日にブログあげられた写真がこないだのです、だった時点で気づくべきだったのかもしれない、とは今になって思うことではあるけれど。

と、ここまではあくまで前提。本題はここではない。(長い)

ようは、それくらい「小越勇輝の越前リョーマ」が復活するなんてことは、ありえないし、想定されていないことだったのだ。おそらく、これまでの声優さん立ちのイベントのように「本人として」ジャージを羽織って登場するくらいだろう、と誰もが思ってたに違いない。

 

このライブは、最新の技術によって原作絵のキャラが3次元として現れ、アニメの声で喋り、歌い、そして踊って、先生と絡んでくれるという奇跡みたいな時間で、キャラが漫画から「飛び出してきた」夢のライブでした。そんな中唯一、ミュキャスであった彼が登場した。

テニミュっていうのは、やっぱりキャラがそのまま飛び出してきた「ような」ってことになっている。「まるで」原作そのまま「みたい」であって「飛び出してきた」ではない。

観る側は、あくまで役者さんが演じてくださっているとわかった上で、キャラがそこにいるように感じるのである。これは多分、どの2.5次元舞台においても同じだと思う。舞台だと知って、分かって、観劇に来ているのだから。

 

でも今回はそれまでとは勝手が違う。だって今回は「テニミュ」じゃない。「舞台」じゃない。原作者である許斐先生のワンマンライブで、遊びに来るのは「原作キャラクター達」なのだ。

先生がこれまでに制作なされた楽曲達を披露するライブで、登場曲含む序盤3曲はオール新曲で先生おひとり。そして、原作キャラとのデュエットターンが4連続で始まった。

・金ちゃんは自分自身は入ってないユニット曲(作詞作曲:許斐先生)ではあるが、お祭り騒ぎな曲で本人にぴったりの「テニプリ Fantastic Bazerのテーマ」

・不二は自分自身のキャラソン(作曲:許斐先生)「Grand Slam」

・幸村は許斐先生個人名義の曲(作詞作曲歌:許斐先生)だが、歌詞の内容が本人にしっくりくる「Smile」

・白石は、自身が参加したユニット曲(作詞作曲:許斐先生)「Brave heart」

と、それぞれにあった選曲、かつ全て先生の手によって作られた楽曲を先生とともに歌い上げている。

白石が歌った「Brave heart」は、他のキャラ達がリョーマのことを語っているような内容の曲。そこからの流れで、リョーマと先生の掛け合いデュエット曲である「フェスティバルは突然に(勿論作詞作曲:許斐先生)」が持ってこられるというセットリスト。

勿論この流れで先生と歌うのが「越前リョーマ」でないわけがない。

だからこそ、もう1人唯一ゲスト参加が発表されていたリョーマの声優さんである皆川純子さんが、これまでのイベントと同様にいっしょに歌ってくださるのだろう、あるいは「原作絵の越前リョーマ」が、歌うのだろうと誰もが考える。

 

そこに現れたのは、小越リョーマだった。

私が4年間見続けていた、1年前まで見ていた、大好きなリョーマの姿。

 

原作キャラにとっての越前リョーマってのは、やっぱり原作の越前リョーマだと思う。そして、それまでずっと原作キャラが出てきていた流れの中、その上、原作キャラの「Brave heart」によって呼び込まれて、「フェスティバルは突然に」を歌うために、リョーマそのものの姿で、仕草で登場した彼は、もはや「テニミュに出ていた役者小越勇輝」ではなかった。「原作から飛び出してきた越前リョーマ」と、ほぼ同義だった。

1年だ、1年もの間彼は「越前リョーマ」という役から離れていた。そしてもうテニミュは「卒業」している。だからこそ今の彼は「テニミュ越前リョーマ」には決してなれない。じゃあ、私の目の前にいた、あのリョーマはなんだ、って考えたらそりゃ「越前リョーマ」としか言い様がないのだ。

フェスティバルは突然にの歌詞に、こんなパートがある。

先生「これからも、さぁ聞かせておくれ」

リョーマ「まだまだだね」

これは、よく考えたらありえないことなのだ。だって小越リョーマが復活するなんてことは、きっともう二度とない。だから、彼の「まだまだだね」を聞くことなんて、もうできない。

でも、確かにこのパートは歌われた。歌詞の通りに歌っただけ、と言われたらそうなのだけれど、そうじゃなくて。

・原作キャラたちが連続して出てきた流れの中歌われた

・この曲はアニメのリョーマ(≒純ちゃん)の歌う曲

・おごたんはテニミュで無印リョーマを最初から最後まで演じきった

だから、この時のこの曲での彼は「原作のリョーマ」であり「アニメのリョーマ」であり「テニミュリョーマ」だった。

彼は、「完全なる越前リョーマ」として、その場にいてくれた。だからこそ「越前リョーマ」の「まだまだだね」はこれからも聞くことができるんだって、そんなふうに思えたんだ。

 

アンコール前、本編終盤。純ちゃんが登場した時、黒と白とピンクのワンピース。

先生の「今日は青じゃないんだ?」という言葉に「いつもは青なんですけど、今日は新テニの負け組意識です」と。

そして歌った新曲詞の内容が、原作終了後の、あるいは新テニ現在の軸のリョーマのような歌詞で。つまり、小越リョーマが演じていないリョーマの歌だ。そして、レギュラー陣の声が入っていることで、その曲を歌ってるのは皆川純子ではなく越前リョーマだと思えた。

「フェスティバルは突然に」を、そして「青学ジャージ」を、小越リョーマに譲った

=原作無印のリョーマを、小越リョーマに託してくれたように、そして新テニのリョーマを純ちゃんがしてくれたように、思えた。

だってアンコールでは青学ジャージを着ていたのだ。用意があったのに本編中に着なかったことには、意図があるとしか思えない。

 

だから、あの時フェスティバルを突然にを歌ってたのは、小越リョーマ(テニミュリョーマ)ってだけじゃなくて。

三次元にやってきた、原作の、テニスの王子様越前リョーマだって思った。 

 

様々なゲストキャラクターが来てくれたその中に主人公である越前リョーマがいなかった意味を考えた。きっとおそらく、それは。

おごたんと純ちゃんが、「越前リョーマそのもの」だったからだ。

2人が、確かに越前リョーマとしてそこにいてくれたから、「原作から飛び出てきたリョーマ」だったから、先生は新しく描くことをなさらなかったのだと。

 

アンコールラストの「Love Festival」、2番始まりを純ちゃんとおごたんのWリョーマが見つめ合いながら歌ったこと、そして最後の挨拶でWリョーマによる「まだまだだね」を聞くことができた感動は、もう一生、忘れられない。

 

あの日、確かにあの場所に、越前リョーマは実在した。